<教えて!たなえり先生>#37-着物の中身〝補整〟について

こんにちは、多奈ゑりきもの教室のたなえりです。今日は着物の着姿を大きく変える補整についてのお話です。

補整の考えかた

ほせいという漢字は「補正」や「補整」と書かれることがありますが、私はほせいは身体のラインを整えることを目的としていると思っているので、今回「補整」と表記させていただきます。

また補整の量や箇所についてもフォーマルとカジュアルの場合は少し違ってきますので、今回はカジュアル(普段着)をメインにお話しさせていただきます。

昔から着物を着るには〝寸胴(円筒形)〟が良いと言われてきました。基本的にこれは今でも変わりはありませんが、寸胴にするには足したり引いたり(潰したり)と人によって様々です。

自分の身体のどこにどれくらい補整が必要なのかを判断する場合は、まず一度補整せずに着物を着てみてください。

その着姿を鏡でじっと見て、自分の想像していた着姿と違う場所を重点的に補整を行なうときっと理想の着姿に近づくはずです。

補整の好み

まずどのような着姿になりたいかをイメージしてください。例えば太って見えないようにしたいやシワを極力なくしたい、洋服の時と印象を変えたくないなど人によって優先順位は違うと思いますので、まずどのような着姿を目指すのか明確にすることが大切です。

次に補整の考えかたについて。なるべく補整なしで着たい人、簡単で楽な補整がいい人、とにかく美しく着たいので補整はとことんしたい人など、補整の量に関しても考えかたは人それぞれです。

その両者の折り合いがつくところが自分にあった補整だと思います。

ちなみに私の場合は、①胸が帯の上に乗ることを避けたい。(和装ブラと胸下に補整)、②腰あたりのしわを無くしたい。(腰に補整を入れることによってしわを取らなくてよくなるので、結果早くきれいに着られる。)という理由で現在は胸下と腰の補整のみをしています。

①出ているところを抑える

まずは出ているところを抑えるのが補整の始まり。一番分かりやすいのが胸の補整です。胸のお肉は比較的移動させやすく、うまく移動させるとそれが鎖骨下の補整となりきれいな鳩胸を作ってくれます。(鳩胸だと衿が安定してきれいな衿元が作れます。)

和装ブラやそれに類似する下着を着ける場合は、胸を潰すというよりも胸を寄せて上に上げて、鳩胸を作るイメージで着装するのがポイントです。

次に腰やお腹周りは裾除けを使ってしっかりと引き締めながら上に上げるように巻きます。特にお腹のお肉を上に上げることによって、ウエストの下部分の補整となります。

裾除けがうまく使いこなせないと言う方には着物向けに作られたガードルなどもあります。

セモアの和装ライトボトム

②凹んでいるところを埋める

出ているところが潰せたら、今度は凹んでいるところにタオルや補整具を使って埋めていきます。ウエストや腰部分の補整はタオルなどで簡単にできます。タオルを使う場合は薄手のものが量が調整しやすく、身体に馴染みやすいです。(今回は分かりやすいように和装ブラの上からタオルを巻いていますが、本来は下着を着けたあとに補整をすることをオススメします。)

タオルを使う場合は折り畳みかたを変えることによっていろいろな場所に使うことができます。上の写真ではタオルを二つ折りにして胴に巻いていますが、背の低い方や腰骨の位置が高い方、お腹が出ている方などはタオルを三つ折りにして使う場合もあります。また、タオルでは厚かったり大きい場合は、ハンドタオルや手ぬぐいなどを使って同じように補整具として使うことができます。

また正面から見てウエスト横の凹みがあまりない場合は、ウエスト横の補整が不要の場合もあるので、その場合は胸の下だけや腰だけという補整もアリです。

タオルを使う場合は別途腰紐などが必要となりますが、それが面倒と感じる場合はウエストや腰用の補整パッドなどもあります。

補整が足りない場合は補整を重ね使いしたり、本来とは違う場所に使えたりすることもありますので、既存アイテムも工夫して使えます。

補整の位置と量について

補整の場所が分かったら次に補整の量について。出来上がりの状態(帯を締めた状態)を1とした場合、補整は0.8〜0.9くらいを目安に行なうと、出来上がりのバランスが良くなります。

帯を締め終えて帯の部分だけ太くなるようだったらウエスト部分に補整の入れ過ぎということですし、逆にウエストに補整を入れてないのに帯の部分だけ太くなるようだったら、胸に補整を入れた方がよい場合があります。

また着物を着た時に裾がスカートのように広がる方はウエストの下(腰骨の上)あたり、帯が下がりやすい人はウエストの下(腰骨の上)、または腰の凹みの補整を足すとうまく収まるケースがあります。

補整の量は着物や帯の厚みによっても変わってきますので、常に一定の着姿を目指すのであれば、着る着物や帯の種類によって補整の量をコントロールすると安定した着姿になります。

ちなみに私は着物の生地が薄くなる夏場は、補整の量をいつもより少し多めに調整しています。

補整はずっと同じではない!

歳を重ねると徐々に体型も変わっていきますので、自分の着姿に違和感を感じた時は補整の見直し時です。(以下は変化の一例です。)

若い時は胸やお尻の位置が高めなので、胸もハリがあるので抑えるだけでよい場合が多く、逆に腰の凹みに多めに補整を入れることもあります。(黒の細い線が補整前のライン、ピンクのラインが補正後のラインとして考えてください。)

しかし、年齢と共に胸もお尻下がってきてお腹も出てきますので、若い時とは逆に胸の下に補整が必要になったり、腰の補整が不要になったりするケースもあります。

体型は人それぞれですし、補整の好みもそれぞれです。各メーカーからいろいろな補整具が発売されてますが、取説通りに使っても同じ結果が得られるとは限りません。自分の補整がよく分からないという時はぜひレッスンにいらしてくださいね〜。

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