5000円で着物は作れるのか。

お客様から「普段着なら着物も¥5000くらいで販売して欲しい」

という投稿をいただいて、これもまたちょっと色々思うところがあったので、書いてみようと思います。

KIMONO MODERNを立ち上げた当初は、着物はやたら高い!というイメージと敷居の高さを感じていたので、とにかく手の届きやすい価格でお届けできるものを作ろう、と思って活動していたのですが、実際のところ1枚着物を作るのにも、普段着とはいえそれなりの費用がかかるなと。そんな壁とジレンマにぶち当たりました。

着物を作るのに38cm幅で約13m分の生地とそれを作るための材料費、職人さんたちの人件費、着物を1枚仕立てるのにも気の遠くなるような細やかな作業とそこに携わる人々への費用。

洋服地(デニム)を使った着物と、プリント柄の帯。帯留めは波佐見焼、帯締めは伊賀組紐(工芸品)。

広幅の洋服地を使うにしても、着物としての見栄えやデザイン性を考えると、それなりのコストはかかってきます。縫製にしても然り。安いには安い、高いには高い、理由があります。

普段着とはいえ、安ければ安いほどよいというものではなく、なぜ着物をわざわざ着るのかということを考えたら、やはりそこは「心を豊かにするもの」だからだと思うのです。

そして、心豊かにするものを紡ぎ出す人々が、心豊かに大事にものづくりを続けていただくために。そして、その知識や経験、技術に敬意を払う、というか。大事な日本の伝統や文化を継続するには、それなりの対価というものがある気がしています。

2022年発表された新作の振袖。着物はレース生地を使用していますが、帯は伝統工芸品である「博多織」を採用しています。

普段着キモノを通じて、日本伝統の技術を守るということ。

具体的に言うと、もっと多くの人が着物を気軽に着れるようになって、着物を着る人が増えれば、その分需要を増すことで生産者を守ることができ、これこそが日本伝統の技術を守ることにつながると考えています。

小さなちいさな試みではありますが、KIMONO MODERNはただ安い着物をご提供するのではなく、日本伝統の文化や技術につなげ守っていけるよう敬意を払い、みなさんに求められるデザインを追求し付加価値を感じていただけるものをお届けしたいと思っています。

KIMONO MODERN 代表取締役社長 濱田友紀子