日本で古くから用いられてきた、鶴と扇。
和洋問わず自由な柄の組み合わせが多い「召しませ花」の半幅帯には珍しく、この帯は両面ともに和に振り切っています。
昔話の1シーンにありそうな、夜の闇を飛びゆく鶴の群れ。
真っ黒な背景に、無数の鶴の白さが際立ちます。
黒い帯というのがそもそも珍しいのだけれど、この帯は白の分量が多いので重暗い印象にはなりません。

洋服でも和装でも、黒いアイテムは存在感が強くなりがちですが、この帯ならどちらかというと白の存在感のほうが勝るので、コーディネートがしづらいということもなさそうです。
鶴のトレードマークである頭の赤い模様も忘れずに、ちょこんと描かれているのも可愛い。このくらいのさりげなさでも、充分にアクセントカラーとしての役割を果たして、帯全体の印象をピリッと引き締めています。
古典柄だから、受け継いだお下がりの着物にも、きっと違和感なく合わせられますね。

扇が互い違いに並び、個性的な印象の裏面。
黒い扇と点描で描かれた扇、というのもなかなか見ない組み合わせで斬新。扇の大きさも、統一せずに少しずつ変化をつけています。
だからでしょうか、古典柄なのに不思議とモダンな感じがするのは。

赤い帯、というと派手になりそうで躊躇してしまうけれど、この帯は真っ赤ではなく、少し茶色がかった赤。この赤なら、どんな色の着物にもスッと馴染んで、ほどよく華やかさを添えてくれそうです。