<教えて!たなえり先生>#34-初めてのお誂え
こんにちは、多奈ゑりきもの教室のたなえりです。今日は初めてのお誂えの時に必要な自分のサイズや、体型別気をつけるポイントなどのお話です。
お誂えに必要な自分の寸法
自分の身体に合った着物を作るためには最低でも以下の3つの寸法を知っておく必要があります。
◎身長
◎ヒップ
◎裄
ヒップサイズは自分で測れても裄はなかなか自分では測れないので、裄が分からない場合は後述の②裄のところで詳しく説明しますね。
①身丈
身丈は着物の長さのことで、肩山から測る〝肩身丈〟と背縫いの長さを測る〝背身丈〟があります。
どちらの寸法を採用しているか着物屋さんによって異なるので事前に確認しておきましょう。
基本的に身長=肩身丈となりますが、肩や胸に厚みがある方は厚み分丈が短くなってしまいますので、そのような方は身長=背身丈がちょうどよい場合があります。逆に身体に厚みがない方は、肩身丈寸法より少しだけ短くすると着やすくなる場合もあります。
着物の丈や腰紐の高さでもちょうどよい長さというのが変わってきますので、いつもの着かたで着てみて着やすい着物の身丈を測ってみると、自分にとってベストの身丈が分かると思います。
着心地に繋がる内揚げの位置と長さ
着物の内揚げとは、着物の繰り越し分や余った丈を縫い込んでいる部分のことで、下図の身八つ口の下1寸(約3.8cm)にある縫い目や布のことをいいます。
後身頃だけにある場合と、前と後ろ両方にある場合もあります。(着物によっては無しという場合もあります。)
内揚げの位置は袖付、身八つ口の長さによって決まるのですが、着物を羽織った時にウエストあたりにあると帯の上や下から内揚げが見えません。
特に背が低い方は袖付や身八つ口の長さを指定せず標準寸法で仕立てると、身八つ口が帯の中に入ってしまい着にくくなったり、場合によっては内揚げが帯の下から見えたりということもありますのでご注意ください。
逆に背が高い方は、袖付や身八つ口の位置が高くなり過ぎて脇が見えやすくなったりする場合もありますので、身長に応じた袖付、身八つ口が着心地につながります。
次に内揚げの長さですが、内揚げは余った生地を縫い込む場所になります。(縫い直してサイズを変えたり、裾が傷んだ時に出せるようにといった理由)
背が高い方はそもそも生地が余らないので、内揚げの長さが短くなったり無い場合もありますが、背が低い方は内揚げをたっぷり取ってあることも多いです。
厚手の生地の着物の時、内揚げがたっぷりとあることでウエスト廻りがもっさりゴロゴロしてしまうこともあるので、今後仕立て直しをしたり丈を長くしたりする予定のない着物の場合は、内揚げ無しや短めという選択もアリですし、あえて内揚げ作っておいてその分を補整にしてしまうという考えかたもあります。
②裄
着物の裄は袖幅と肩幅を足した寸法のことです。裄はなかなか自分では測ることが難しいので、お店で測ってもらうかもしくは手持ちの着物の中でちょうどいいものがあれば、その着物の裄を測ってみるという方法があります。
実際に採寸してもらう時は、下のイラストのように手を斜め45度くらいに下げ、首の後ろのぐりぐりから肩山を通って、手首のぐりぐりまでを測ります。
着物の場合は以下の場所を測ります。
実際に着物を着た時、手首のぐりぐり近くに袖口がきていればちょうどいい長さという判断ですが、ぐりぐりからかなり上に袖口があったら短く、手の甲まで袖口がかかるようでしたら長いということになります。
着た時の裄の長さは衣紋の抜き加減によっても変わってきますので、身丈同様いつもの着かたで着てみてちょうどよい着物の裄を測ってみてください。
袖幅と肩幅の関係
着物の裄は前述のとおり袖幅と肩幅で構成されており、少しだけ袖幅を広くするというのが一般的です。
袖幅=裄÷2+1cm
肩幅=裄÷2−1cm【例】裄 68cmの場合、肩幅33cm、袖幅35cm
細身の方の場合、袖幅を反物幅いっぱいに設定して、逆算して肩幅を決めることにより、脇の部分の布が少なくなり、脇の部分の布のもたつきが軽減される場合があります。
袖幅=反物幅いっぱい
肩幅=裄−袖幅【例】裄 68cmの場合、肩幅 32cm、袖幅36cm
裄を決める時にひとつ注意しておきたいのが、手が長いからと言って裄を長く作り過ぎると、その上に着る羽織やコートの裄が足りない(反物によっては裄が出ない)ということもありますので、裄を長く作り過ぎない方が良い場合もあります。(普段着であれば少し短めでもぜんぜん問題ないですよ〜。)
③身幅
ヒップサイズからは着物の身幅を知ることができます。身幅は前幅と後幅と衽(おくみ)で構成されておりヒップが100cm くらいまでなら衽は15cm固定となります。
以下が標準的な身幅の割り出し方です。
前幅=ヒップ÷4+1cm
後幅=ヒップ÷4+6cm【例】ヒップ92cmの場合、前幅=92÷4+1cm=24cm、後幅=92÷4+6cm=29cm
前幅と後幅にプラスする寸法は体型によって異なります。お腹が出ている方は前の方を多く、お尻が大きい方は後ろを多くすると着姿がスッキリします。
実際に着物を着た時に、右の脇縫いが上前で少し隠れるくらいがちょうどよい身幅となります。その他のチェックポイントなどは過去のインスタライブで詳しく説明していますので参考にされてください。
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胸のボリュームが控えめの方は裄の時と同様に胸の部分の布が余りがちなので、その場合は抱幅(胸の部分の幅)を少し狭くすると布の余りを少なくすることができます。
胸にボリュームがある方は前幅と抱幅を同寸にしておくと衿がはだけにくくなります。
腰や太ももが張っている方は、着物の裾部分の幅を少し狭く仕立てる〝スマート仕立て〟にすると着やすい場合もあります。(踊りやお茶で着用される場合は、裾を狭くした場合裾廻りに負担がかかる場合もありますのでご注意ください。)
体型別にいろいろとご案内しましたが、身丈と身幅を変えるだけでも十分着やすい着物となりますので、ぜひご自身にあった寸法を見つけてみてくださいね。